わが身は変わらず、歴る土地が変わる
命式と大運の関係を、これほど見事に言い当てた言葉を私は他に知りません。 命理の最高峰の古典とされる『滴天髄』の、歳運をめぐる一節です。
人生を一度きりの長い旅と見立てる。自分という旅人(日主)と、生まれ持った旅の装備(命式)は変わりません。 けれども、旅がどの土地を通っているかは、十年ごとに移り変わっていく。 温暖で実り豊かな土地を行く十年もあれば、険しい山道を越える数年もある。 そして毎年、旅先で出会う人(太歳)が、その年の彩りを添えていく。 大運とは、いまあなたの旅がどんな土地を通過しているかを教えてくれる、旅程表なのです。
十年ごとの、季節の変わり目
大運は、生まれ月の柱をもとに、十年をひと区切りとして順に巡っていきます。 何歳で最初の大運に入るかは人によって違い、切り替わりの年齢も一人ひとり異なります。 八歳で変わる人もいれば、三歳、五歳という人もいる。 つまり、同じ年に生まれた二人でも、人生の季節が切り替わる時期はずれるのです。
この「季節」という言葉は、比喩以上のものです。 命式は五行の配合でできており、大運はそこへ新しい五行を運び込みます。 火が欲しい命式に火の大運が巡れば、乾いた薪に火がつくように才が燃え立つ。 水が過剰な命式にさらに水の大運が重なれば、川が溢れるように足元が揺らぐ。 良し悪しは大運そのものにあるのではなく、命式との組み合わせで決まります。 だから、同じ大運でも、ある人には春となり、別の人には冬となるのです。
「悪い運」は、悪いのか
鑑定でいちばん丁寧にお伝えしたいのが、ここです。 冬の大運と申し上げると、多くの方が顔を曇らせます。 けれども冬は、悪い季節ではありません。種を蒔く時期ではない、というだけです。
冬にすべきことは、はっきりしています。学ぶこと、鍛えること、蓄えること、そして守りを固めること。 実際、私が鑑定してきたなかで大きく伸びた方々は、例外なく、守りの季節に力を溜めていました。 逆にもったいないのは、春が来ているのに冬の構えのまま縮こまっている方、 そして冬のさなかに春のつもりで大勝負に出てしまう方です。 季節そのものは選べません。けれども、季節に合った過ごし方は選べる。 大運を知る価値は、この一点に尽きます。
時の運と、場の運。二つの車輪
私の鑑定では、大運を単独では扱いません。 ひとつには、インド占星術のダシャーという、文明の異なるもうひとつの時期読みと重ねて精度を確かめます (この話はインド占星術とヴァーストゥのコラムに書きました)。 ふたつの体系が同じ時期に同じ波を指したとき、その読みは一段と確かなものになります。
そしてもうひとつが、風水との組み合わせです。 大運という時の運は、選ぶことができません。 けれども、住まいや職場という場の運は、選び、整えることができます。 向かい風の季節こそ、環境を整えて消耗を減らす。 追い風の季節には、環境の抵抗を取り除いて、風を目一杯受ける。 引越しや移転など「動く時」を択ぶ技術については奇門遁甲のコラムもあわせてご覧ください。 時の運と場の運は、人生という車の両輪です。片方しか見ない鑑定は、どうしても片手落ちになります。
むすびに
いま自分がどの季節にいるのか。それを知るだけで、不思議と焦りが消える、と多くの方がおっしゃいます。 空回りの原因が自分の無能ではなく季節にあったと分かれば、いま打つべき手が変わる。 春の訪れる時期が見えていれば、冬を計画的に使える。 大運とは、人生を先取りする予言ではなく、いまを正しく過ごすための暦なのです。
ご自身の大運がいまどこにあり、次の切り替わりがいつ来るのか。 図面鑑定では、四柱推命とインド占星術を重ねて、あなたの人生の季節をお読みします。 大きな決断を控えている方こそ、一度ご自身の暦を確かめてみてください。