家の毛髪、という古い見立て
そもそも風水は、住まいを生きものになぞらえて考えてきました。現存する最古の住宅風水書『黃帝宅經』は、家を人の身体に見立てて、こう説いています。
草木は、住まいの毛髪である。この一句が、植物と風水の関係をよく言い当てています。髪が豊かでつやのある人が生き生きとして見えるように、緑が健やかに茂る家には、生気がめぐります。逆に、葉が枯れ、埃をかぶった鉢は、乱れた毛髪のように、その家の気を弱く見せてしまう。植物を置くとは、家に生きた毛髪を植えることなのだと、まずはそう捉えてみてください。
丸く広い葉は、財を蓄える
生気を養い、財を招きたいときに選ぶのは、葉の丸い、幅の広い常緑の植物です。丸く満ちた形は円満や調和を象り、尖った形が煞を帯びるとする形勢派(巒頭)の見立てと、ちょうど裏表をなします。この考えを植物に当てはめて説いてきたのが、本場・華語圏の風水師たちです。闊葉で常緑の緑には生気を旺盛にして財を聚める働きがあり、水耕のものはさらに財を催すと、広く言い習わされてきました。パキラ(発財樹)のように、名前からして財を連想させる木が好まれてきたのも、この延長にあります。
置き場所としてまず考えたいのが、財位です。部屋の主たる入口から入り、対角線上の奥まった隅が明財位と呼ばれ、気がもっとも溜まりやすい場所とされます。ここに丸葉の緑を据え、明るく健やかに保つと、溜まった財の気に生命が吹き込まれ、いっそう旺盛になると考えます。玄関、部屋の隅、階段のわきなど、気がよどみやすい場所に一鉢添えるのも、流れを整えるうえで理にかなっています。
なお、より厳密に財の位置を定めたいときは、方位の目安だけでなく、建物の坐向と築年から起こした飛星盤で当令の向星を確かめます。このあたりは玄空飛星のコラムに譲りますが、手がかりとして明財位から始め、盤で裏を取るという順序が、実際には堅実です。
棘は、邪を払うための道具
いっぽうで、まったく逆の働きを持つのが、仙人掌に代表される棘のある植物です。もともと風水では、尖って角立った形は煞気を帯びるとみます。柱の角や隣家の尖りがこちらを突く尖角煞は、古くからの形勢派(巒頭)が説く形煞の一つです。その尖った気には、同じく尖ったもので受けて返す。これが棘のある植物の化煞という働きで、本場の風水師たちが体系づけてきた使い方です。窓の外に三叉や尖角、乱石といった煞が見えるとき、仙人掌や葵類のような尖葉細葉の植物を窓辺に置いて煞を化す、という具合に用いられてきました。
ここで気をつけたいのは、化煞の植物を、財を招きたい場所に置いてはいけないということです。棘のある鉢を財位に据えると、せっかく溜まった財の気まで、棘が突いて散らしてしまいます。同じ理由で、曲がりくねって伸びる蔓性の植物も、気を乱すとして財位には向きません。棘は守りの道具、丸葉は蓄えの道具。この役割を取り違えないことが肝心です。
置いてはいけない緑、枯らしてはいけない緑
植物の風水で、置き場所以上に大切なのが、その緑が生きているかどうかです。もっとも避けたいのは、枯れかけた鉢をそのままにしておくこと。生気を養うはずの植物が生気を失えば、かえって場の気を奪います。弱った鉢は、置かないよりなお悪いと考えてください。世話をして活き活きと保てないなら、いさぎよく手放すほうが、家のためになります。
造花やドライフラワー、そして水気を欠いた乾いた花材も、風水では生気に乏しいものとして、住まいの中心には勧めません。飾るなとまでは申しませんが、家の要となる場所は、あくまで生きた緑に任せたいところです。寝室については、眠りを支える陰の空間ですから、大きすぎる鉢や、数を置きすぎることは避け、小ぶりの緑をひとつ、ほどよく添えるくらいにとどめるのがよいでしょう。
「丸葉に財、棘に化煞」で終わらせない
ここまでお話ししてきた丸葉と棘の使い分けは、広く知られた、いわば大づかみの話です。入口としては正しいのですが、実際の鑑定で私が緑を置くときは、ここでは終わりません。八宅、玄空飛星、そして地形を読む形勢と、複数の流派を重ね合わせたうえで、どの種を、いくつ、部屋のどこへ、どちらへ向けて、そしていつ据えるかまでを、細かく定めていきます。数をいくつに揃えるか、いつ置くかで働きが変わることも多く、丸ければ何でも財位に、棘なら手当たり次第に窓辺に、という単純な話ではないのです。
そこまで詰めて置いたときの植物の効きは、正直に申し上げて、私自身が何度も驚かされてきたほどです。生きた緑は、それだけ場の気を確かに動かします。裏を返せば、置き方を誤れば、良かれと思った一鉢が逆に働くことも起こりうるということです。ですから、運を上げたい一心で、あちこちに緑をむやみに増やすことは、私はおすすめしません。何を、いくつ、どこへ、いつ置くのか。そこまで見定めて据えて初めて、緑はその力を正しく発揮するのです。
むすびに
観葉植物が風水で重んじられるのは、それが「生きている」道具だからです。石や絵と違い、水をやり、陽に当て、枯れ葉を摘むという世話が要ります。けれどもその手間こそが、住まいの気に日々目を向けるということにほかなりません。毎朝ひと鉢の緑に触れる習慣が、部屋の乱れや空気のよどみに、自然と気づかせてくれる。植物の風水とは、突き詰めれば、家をよく見て、よく手を入れる暮らしそのものなのだと思います。
どの場所にどんな緑を置けば、その家の気がいちばん活きるのか。丸葉で蓄えるべき場所と、棘で守るべき場所は、間取りと坐向によって一軒ずつ違います。ご自宅の図面をもとに具体的にお知りになりたい方は、どうぞ一度ご相談ください。