まず「坐向」を見極める

中国伝統風水で、物件を見るときの出発点は、間取りでも内装でもありません。 その建物が「どの方位を背にして、どの方位を向いているか」という坐向です。 背にする方位を坐山、向く方位を朝向と呼びます。 これを羅盤で正確に測り、玄空飛星派の理論にかけて、 その建物が「いまの時代に栄える気(旺気)を受け取れるか」を読み解きます。

ここで外せないのが、2024年から2043年までが「九運」、九紫離火の運に入っている、という事実です。 時代の主役となる旺気の方位は、二十年ごとに静かに移ろいます。 前の「八運」で良かった坐向が、九運ではもう力を持たない、ということも珍しくありません。 裏を返せば、移転とは、いまの時代の旺気を取り込む坐向へ建物を選び直す、またとない好機なのです。

背後の支え、靠山を確かめる

建物や経営者の席の背後に、より高いビルや山といった靠山(かおざん)、すなわち後ろ盾があると、 事業は安定し、助けてくれる人の縁にも恵まれると考えます。四神でいう「玄武」の働きです。 反対に、背後が崖や急な下り坂、あるいは大きく開けて空しいと、 足場が定まらず、支えを得にくい。候補のビルを見比べるときは、間取り図を眺める前に、 まずその建物の真後ろに何があるかを、ぜひ一度確かめてみてください。

正面の明堂を重んじる

入口や建物の正面に広がる、開けた空間を明堂と呼びます。四神では「朱雀」にあたります。 明堂が広く明るいほど、気はのびのびと集まり、発展や集客につながるとされます。 前面に広場や公園、ゆとりある道路、あるいは水辺があれば申し分ありません。 逆に、正面のすぐ前を壁や別のビルが圧している物件は、気の巡りがそこで詰まり、 業績が伸び悩みやすいと見ます。間口の前に「呼吸できる空間」があるかどうか。これは思いのほか大切な条件です。

大門は、気を招き入れる口

オフィスの入口は、人と仕事の縁、すなわち気が入ってくる納気口であり、 風水でもっとも重んじられる場所のひとつです。明るく、広く、清らかであることが基本。 扉を開けてすぐ壁や柱が迫る「開門見壁」は、気が入りにくく避けたい配置です。 また、入ってすぐ正面に背の高い棚やトイレが来るのも好ましくありません。 扉を開けたとき、視線がほどよく奥へ抜けていく。そんな入口が理想です。

周囲に潜む「形煞」を避ける

周囲の建物や室内の構造が放つ、好ましくない影響を形煞といいます。 内見の段階で、次のような形がないかを、さりげなく見ておくとよいでしょう。

  • 路冲。道路がまっすぐ建物や入口に突き刺さってくる形。
  • 天斬煞。正面の二棟のビルの隙間が、刃のようにこちらへ向かってくる形。
  • 尖角煞。隣の建物や柱の鋭い角が、机や入口を突く形。
  • 横梁圧頂。太い梁が、座席や社長の頭上を横切る形。

やむを得ずこうした形がある場合も、観葉植物やパーテーション、天井での目隠しなどで和らげる「化煞」の手当てが可能です。 完璧な物件など、そうそうありません。要は、避けるべきを避け、残った難を上手にいなすことです。

財位と席次を活かす

部屋に入って対角線上の角は明財位と呼ばれ、財運が集まりやすい場所とされます。 ここを明るく整え、観葉植物や小さな水槽(魚缸)を置くと、気が生き生きと働くと考えます。 座席については、座って左側を青龍、右側を白虎とし、 「左を高く、右を低く」整えると、事業運と人の和が高まるとされます。 社長や経営者の席は、壁を背に靠山を負い、入口を見渡せる奥に据えるのが基本です。 このあたりは、社長室そのものの話と地続きですので、別の稿でも詳しく触れています。

移転の日取りと方位を選ぶ

同じ移転でも、いつ、どの方位へ動くかで、その後の流れは驚くほど変わります。 中国伝統風水では、その年の凶方位である太歳・三煞・五黄にあたる方位への、 着工(動土)や移転を避けます。そのうえで、奇門遁甲などを用いて、 御社と経営者にとって吉となる移転の日時と方位を選び定める。 擇日と擇方と呼ばれる作法です。 新しいオフィスでの船出に、「天の時」を味方につけておく。古来、国家が重んじてきた知恵です。

むすびに

オフィス移転は、内装やレイアウトを整える前の「坐向を選ぶ段階」こそ、本場・中国の風水がもっとも力を発揮する場面です。 九運という時代の節目に動くいま、旺気を取り込む坐向を選べるかどうかが、その後二十年の事業の流れを、静かに左右します。

もっとも、正確な坐向の判定には現地での羅盤計測が、最適な席次や財位の活用には、 経営者ご自身の命卦との照合が欠かせません。 自社の物件、あるいは候補のビルをどう読むのか。具体的に知りたいと感じられたら、どうぞ一度ご相談ください。 物件選びの段階から、ご一緒に歩かせていただきます。